運送会社が30日間の事業停止処分|「勤務時間の著しい不遵守」の基準と、監査で判明した5つの違反

この記事のポイント
  • 2026年10月28日、中部運輸局が岐阜県の一般貨物自動車運送事業者に、事業停止30日間・文書警告・安全確保命令を行いました。
  • 中部運輸局の処分基準では、運転者の勤務時間・乗務時間の基準が「著しく遵守されていない」場合に、30日間の事業停止処分を行うと定めています。
  • 「著しく」には数の基準があり、点呼記録などの書類の不備とは別の違反として定められています。
  • 同時に確認された点呼記録・運転者等台帳・初任診断・配置車両数の届出は、どの運送会社でも日常的に管理している項目です。

2026年10月28日、中部運輸局は岐阜県の一般貨物自動車運送事業者に対し、30日間の事業停止処分を行ったと発表しました。

監査では、運転者の勤務時間・乗務時間に関する基準の著しい不遵守のほか、点呼記録や運転者等台帳の不備、車両数変更の無届、初任診断の未実施が確認されています。

今回の事例は、運送会社にとって日々の運行管理と帳票管理を見直すきっかけになります。この記事では事業者名は伏せ、中部運輸局が公表している資料で確認できる範囲で整理します。

目次

1.30日間の事業停止となった理由

中部運輸局の発表によると、今回の処分は事業停止30日間に加え、文書警告と安全確保命令が出されています。

特に重要なのが、運転者の勤務時間・乗務時間に関する基準の「著しい不遵守」です。発表資料で「主な違反内容」として挙げられているのは、この違反だけです。

中部運輸局の行政処分の基準(公示)では、貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項に違反して、勤務時間・乗務時間の基準が「著しく遵守されていない」場合、違反営業所等に対して30日間の事業停止処分を行うと定めています。

「著しく遵守されていない」とは(中部運輸局の処分基準)

次の2つを両方満たす場合をいう、と定められています。

  1. 基準の未遵守が1か月間で計31件以上あった運転者が3名以上確認されたこと
  2. 過半数の運転者について、拘束時間の未遵守が確認されたこと

ここでいう「基準」は、国土交通省の告示(平成13年国土交通省告示第1365号)のことです。この告示は、運転者の勤務時間・乗務時間を定めるときの基準を、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)とすると定めています。

つまり、今回の事例を「点呼記録の書き方を間違えただけで30日間の事業停止になった」と理解するのは正確ではありません。

運転者の労働時間や拘束時間について、重大な基準違反が確認されたことが重要な点です。

なお、処分基準には「全運転者等に対して点呼を全く実施していない場合」も30日間の事業停止として定められています。しかし、今回の発表にある点呼の違反は「点呼の記録の記載事項等が不適切であった」という内容で、点呼を全く実施していなかったという内容ではありません。

公表資料には、個々の運転者の具体的な違反件数や、違反に至った社内事情までは記載されていません。どの違反にどの処分(事業停止・文書警告・安全確保命令)が対応するのかの内訳や、事業停止の具体的な期間(日付)も記載されていません。

今回付された違反点数は30点(累積30点)です。中部運輸局の処分基準では、事業停止処分を行う場合、同基準5(1)に掲げる違反行為(勤務時間・乗務時間の基準の著しい不遵守など)ごとに30点の違反点数を付すと定めています。

2.監査で確認された5つの違反

公表された違反は次の5項目です。

違反の内容条項(発表資料の記載)
①営業所別配置車両数の無届変更
配置車両数を変更していたにもかかわらず、必要な届出を行っていませんでした。
貨物自動車運送事業法施行規則第6条第1項第1号
②勤務時間・乗務時間に関する基準の著しい不遵守
運転者の勤務時間や乗務時間について、国が定める基準が著しく守られていませんでした。
貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項
③点呼記録の記載事項等の不備
点呼記録の記載事項等が不適切であると認定されました。
貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第5項
④運転者等台帳の記載事項等の不備
運転者等台帳についても、記載事項等が不適切であると認定されました。
貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5第1項
⑤初任運転者に対する適性診断の未実施
対象となる初任運転者に対し、必要な初任診断が実施されていませんでした。
貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第2項

これらは、運送会社が日常的に管理している項目ばかりです。

3.神奈川など、ほかの地域の事業者が読むときの注意

今回の処分は、中部運輸局の処分基準(公示)に基づくものです。ほかの地域では、それぞれの運輸局の基準が使われます。

ただし、「著しく遵守されていない」の定義(31件以上・3名以上・過半数の運転者の拘束時間)は、国土交通省の通達「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準の細部取扱いについて」(令和7年2月28日改正)にも同じ文言で書かれており、関東運輸局のサイトにも掲載されています。

実際の処分の内容は、監査で確認された事実や処分歴などによって個別に決まります。神奈川県内の事業者が自社に当てはめて考えるときは、関東運輸局の公示もあわせて確認してください。

4.運行管理は「記録があること」だけでは足りない

運送会社では、点呼記録、運転日報、運転者等台帳など、多くの書類を管理しています。

しかし、記録を残していることと、実際に適切な管理が行われていることは同じではありません。

例えば、点呼記録が揃っていても、運転者の実際の乗務状況と記載内容に食い違いがないか、運転日報と照らし合わせて確認しておくことが大切です。

拘束時間についても、個々の運転者の勤務実績を把握し、基準を超える運行が続いていないかを確認することが大切です。

また、車両の増減や配置変更、運転者の採用など、現場の状況が変わったときには、必要な行政手続や診断・教育が漏れていないかという確認も欠かせません。

5.自社で見直しておきたいこと

今回の事例を踏まえ、次のような点を一度確認してみてはいかがでしょうか。

点呼記録と運転日報
内容に食い違いはないか
拘束時間・休息期間
運転者ごとに継続して確認できているか
運転者等台帳
記載内容は現在の状況と一致しているか
新しく採用した運転者
適性診断・教育に漏れはないか
車両の増減・営業所間の配置変更
必要な届出・認可の確認ができているか

これらは、監査の直前にまとめて確認するよりも、日常業務の中で定期的に確認できる仕組みを整えておくことが重要です。

現場で続けられる管理体制を

私は物流の現場で約20年、運行管理の実務や出荷管理に携わってきました。

運行管理では、書類の様式を整えるだけでなく、現場で無理なく続けられる仕組みを作ることが重要だと考えています。

日報と点呼記録の照合、運転者情報の更新、必要な手続の確認など、一つひとつは特別な作業ではありません。

しかし、日々の業務に追われる中で確認が後回しになれば、複数の不備が重なる可能性があります。

巡回指導や監査は、書類を準備することだけが目的ではありません。日頃の管理が適切に行われているかを確認する機会でもあります。

今回の行政処分を、他社だけの問題として終わらせず、自社の運行管理体制を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

あさば行政書士事務所では、横須賀・三浦を中心に神奈川県内の運送事業者さまに向けて、巡回指導・監査対策や事業計画変更手続きをサポートしています。

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※本記事は2026年11月4日時点の公表資料をもとに作成しています。個別事案における処分内容は、違反の種類、程度、処分歴などによって異なります。

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この記事を書いた人

あさば行政書士事務所(神奈川県横須賀市)代表、行政書士の浅葉竜一です。
自動車部品の物流・倉庫会社で20年以上勤務し、運行管理者・出荷管理者として運送の現場に携わってきました。
その経験を活かし、一般貨物自動車運送事業の許可申請、増車・車庫などの変更手続き、巡回指導対策、黒ナンバー・貨物利用運送など、運送業の手続きを中心にサポートしています。
自動車登録・車庫証明、相続・遺言のご相談も承ります。

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