荷主の敷地にトラックを置くときの注意点|土地を借りただけでは緑ナンバーの車庫にならない

このコラムで分かること
  • 荷主の敷地を借りただけでは、緑ナンバーの車庫にならない理由
  • 荷主の敷地を車庫にするときに確認されることと、増車との順番
  • 敷地を借りる前に確認しておきたいチェックリスト
目次

例えば、こんなケースです

新しい荷主との取引が決まり、運送会社がその荷主の工場敷地の一部を借りて、事業用トラックを置くことになりました。

荷主からも「空いているスペースなら使っていいですよ」と言ってもらえ、土地の賃貸借契約も結びました。

「契約したから、これでトラックを置ける」

そう考えてしまいがちですが、緑ナンバーのトラックを恒常的に置く場所については、土地の貸し借りとは別に確認が必要です。

緑ナンバーの車庫は「事業計画」の一部

自家用車(白ナンバー)は、原則として1台ごとに警察で車庫証明を取ります。

一方、運送事業用のトラック(緑ナンバー)には、1台ごとの車庫証明はありません。代わりに、運輸局に提出している事業計画の中に、自動車車庫の位置と収容能力が記載されています。

つまり、緑ナンバーのトラックを恒常的に車庫として使用する場所については、事業計画上の車庫として適切に位置付けられている必要があります。荷待ちなどの一時的な駐車とは区別して考えます。

土地を借りる契約は、車庫として使うための入口にすぎません。契約を結んだだけでは、その土地は運送事業の車庫にはなりません。

荷主の敷地を車庫にするときに確認されること

荷主の敷地を新たに車庫として使う場合、事業計画の変更手続きが必要になる可能性が高いです。手続きの区分は、車庫の新設か、位置・収容能力の変更か、営業所との距離などによって確認が必要です。

その際には、主に次のような点が確認されます。

  • 土地を使用する権原があるか(賃貸借契約書など)
  • 営業所との距離が基準の範囲内か
  • 必要な面積があり、車両を適切に収容できるか
  • 前面道路をその車両が通行できるか
  • 都市計画法などの関係法令に抵触しないか

「荷主の敷地だから問題ないだろう」とは限りません。工場の敷地であっても、車庫としての要件は別に確認されます。

増車と車庫は別の手続き

新しい荷主の仕事に合わせて、トラックを増やす場合もあるでしょう。

営業所に配置する車両数の変更(増車)は、原則として事前届出で行います。ただし、増車に伴って車庫の収容能力の拡大などが必要になる場合は、その変更手続きを先に終えておく必要があります。

順番としては、次のようになります。

  1. 荷主の敷地を借りる(使用権原の確保)
  2. その土地を車庫として事業計画に加える手続き
  3. 車庫の手続きの完了
  4. 増車の届出
  5. 運輸局の書類をもとに、緑ナンバーで登録

トラックの納期が先に決まっていても、車庫の手続きが追いつかなければ登録できません。

注意したいのは「今あるトラックを移すだけ」のケース

新しくトラックを増やす場合は、増車の届出や登録の段階で、車庫の収容能力が確認されます。どこかで「車庫が足りない」と気づく機会があります。

一方、すでに配置しているトラックを荷主の敷地に移して置くだけの場合は、増車の手続きを伴いません。そのため、手続き上の確認機会が少なくなり得ます。

その結果、手続きがないまま、荷主の敷地が事実上の車庫として使われ続けてしまうことがあります。

また、「今あるトラックを荷主の敷地に移し、空いた自社の車庫に新しいトラックを入れる」という形にも注意が必要です。一見、自社の車庫に収まっているように見えますが、荷主の敷地が正式な車庫になっていなければ、全体の収容能力は増えていません。

補足:貸す側も運送会社の場合

この記事では荷主の敷地を例にしましたが、同業の運送会社から敷地を借りるケースもあります。

貸す側が運送会社で、その土地が貸す側自身の事業用車庫として事業計画に含まれている場合は、貸す側についても車庫の位置・収容能力等の変更が必要となる可能性があります。

この場合、借りる側だけでなく、貸す側の事業計画にも影響します。貸す側の将来の増車枠が減ることにもなるため、両社で事前に確認しておくことが大切です。

手続きをしないまま使うとどうなるか

事業計画上の車庫と実際の使用状況が異なる状態は、巡回指導などで確認される可能性があります。

また、車庫に関する法令違反が監査等で確認され、行政処分につながった場合には、その後の手続きにも影響します。

関東運輸局の処理方針では、事業規模の拡大となる申請について、申請日前6か月間(悪質な違反の場合は1年間)に車両の使用停止以上の処分を受けていないことが条件の一つとされています。また、増車についても、累積違反点数や巡回指導の評価によっては、通常の届出ではなく審査の対象となる場合があります。

必要な手続きを経ないまま使用していた車庫について問題が生じ、その後、正式な車庫の手続きや増車の手続きにも影響することがあります。新しい荷主の仕事のために動いたはずが、これでは本末転倒です。

借りる前のチェックリスト

荷主の敷地にトラックを置く前に、次の点を確認しておきましょう。

置く場所を、恒常的な車庫として使うのか
営業所との距離は基準の範囲内か
車庫として必要な面積と、車両の配置に余裕はあるか
前面道路をその車両が通行できるか
契約書に使用目的・区画・契約期間・解約予告期間が定められているか
増車をする場合、車庫の手続きと増車の届出の順番は合っているか
貸す側が運送会社の場合、その土地が貸す側の車庫に含まれていないか

まとめ

荷主の敷地にトラックを置かせてもらうことは、取引を広げるうえで自然な流れです。

ただし、緑ナンバーのトラックにとって、車庫は事業計画の一部です。土地を借りる契約だけでは完結しません。

「置き始める前に確認する」。これが、運送会社にとっても、土地を貸す側にとっても、一番負担の少ない進め方です。

※この記事は一般的な制度の解説です。具体的な手続きの区分や必要書類は、管轄の運輸支局の取扱いや個別の事情によって異なります。実際の手続きにあたっては、運輸支局または専門家にご確認ください。

車庫の確認から、行政書士にお任せください
運送会社の方

物流の現場で20年以上、運行管理・出荷管理に携わってきた行政書士が担当します。借りる予定の土地の確認から、車庫の変更・増車の手続きまでご相談いただけます。

増車・営業所・車庫の手続きを見る
トラックディーラーの方

お客様の車庫に増車分が入るか、発注前に確認したいときもご相談ください。ご相談の受け付けかたを専用ページにまとめています。

ディーラー様向けの窓口を見る
お問い合わせ・総合窓口

どちらに当てはまるか分からない場合も、こちらからどうぞ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

あさば行政書士事務所(神奈川県横須賀市)代表、行政書士の浅葉竜一です。
自動車部品の物流・倉庫会社で20年以上勤務し、運行管理者・出荷管理者として運送の現場に携わってきました。
その経験を活かし、一般貨物自動車運送事業の許可申請、増車・車庫などの変更手続き、巡回指導対策、黒ナンバー・貨物利用運送など、運送業の手続きを中心にサポートしています。
自動車登録・車庫証明、相続・遺言のご相談も承ります。

目次