「正しくやっている」が、一番危ない。巡回指導では見えない現場の死角。

この記事の要点
巡回指導で大きな指摘がなくても、2024年4月の改善基準告示の改正より前に作った教育資料や、自社向けに項目を減らした帳票が、法令上の死角になっていることがあります。教育資料と、点呼記録簿・運転者台帳の様式を現行の基準で見直し、根拠のある記録として残しましょう。
このコラムで分かること
  • 巡回指導で指摘がなくても、安心できない理由
  • 熱心な会社ほど陥りやすい「教育資料」の死角
  • 現場の工夫が裏目に出る「帳票カスタマイズ」の死角
  • 死角を見つけるために、今日からできること

毎日の運行管理、本当にお疲れ様です。

物流の現場で運行管理の実務に携わってきた中で、何度も耳にしてきた言葉があります。

「うちは巡回指導でも大きな指摘は受けていないし、帳票もしっかり書いているから大丈夫」

経営者様や運行管理者様が、法令遵守に真剣に向き合い、自信を持たれていること自体は素晴らしいことです。ただ、制度の変化が続く今の運送業界では、この「うちは正しくやっている」という安心感の中にこそ、見落とされやすい「死角」が潜んでいます。

目次

巡回指導で指摘がなくても、安心できない理由

巡回指導は、適正化実施機関が法令を守れているかを確認し、改善を促すための「指導」です。書類がそろっているか、決められた運用ができているかを確認するもので、会社のやり方すべてにお墨付きを与える「合格証明」ではありません。

「自分たちはきちんとやっていた」それはただの『たまたま』だったのかもしれません。巡回指導を何度受けても、細かな指摘はあっても大きな指摘はなく、「自分たちのやり方で問題ない」という認識でした。しかし法令を改めて読み直したとき、2024年の改善基準告示に合わせて見直すべき点がいくつも見つかりました。

― 運行管理の現場で、私自身が経験したことです。

なぜ、大きな指摘を受けていない営業所でも、法令とのずれに気づかないままになってしまうのか。現場の運用と、行政書士の法令の目線が交差したときに見えてくる、2つの具体的な死角を解説します。

死角その1:熱心な会社ほど陥る「教育資料の罠」

運送の現場を支える土台は、ドライバーへの教育です。多くの営業所では、独自の資料を用意し、時間を割いて丁寧に指導しています。

ところが、熱心に教育を続けている営業所ほど、使っている教育資料や社内の指導ルールが、2024年4月の改善基準告示の改正より前の内容のまま、更新されていないことがあります。

古い基準をもとに、どれだけ丁寧に指導を重ねても、現行の基準からは気づかないうちに離れていきます。「毎年同じ資料で研修をしている」「前任者から引き継いだマニュアルを使い続けている」という場合は、良かれと思って行っている教育が、そのまま法令上のリスクになっている可能性があります。

確認のポイント
教育資料に書かれている拘束時間・休息期間の基準が、2024年4月以降の内容になっているか。資料の作成日や更新日が分かるようになっているか。

死角その2:現場の工夫が裏目に出る「帳票カスタマイズの罠」

トラック協会などが配布している点呼記録簿や運転者台帳のひな型をもとに、自社の配車や運用に合わせて、書きやすいように項目をアレンジする。これは現場の作業を効率よくするための、正しい判断のように思えます。

しかし、ここにも死角があります。点呼の記録や運転者台帳には、法令で記録しなければならない項目が決められています。長年にわたって書きやすさを優先して手を加えるうちに、その必須の項目まで削られ、記録としての価値を失っていることがあります。

巡回指導で書類がそろっていると確認されて指摘がなかったとしても、重大な事故が起きたときや、運輸局による監査が入ったときには、こうした削られた項目や形だけの運用が問題になり、会社を守る盾にはなりません。

確認のポイント
今お使いの帳票の様式(ひな型)に、法令で定められた記載事項がすべてそろっているか。項目を削ったり、まとめたりした箇所がないか。

帳票の様式の確認は、当事務所の「帳簿ひな型点検」でお手伝いしています。今お使いの様式を写真で送っていただき、法令で定められた記載事項と照らし合わせて確認します。記入済みの記録の中身ではなく、様式そのものを確認するサービスです。

運行管理の「現場感覚」×行政書士の「法務知識」で死角をなくす

なぜ、このような死角が生まれてしまうのか。

それは、日々の運行や労務管理に追われる現場の運行管理者様にとって、改正が続く法令・告示・通達をすべて追いかけ、帳票や教育にすぐ反映させることが、現実には非常に難しいからです。

運行管理の視点(現場の回しやすさ)だけでは、法令の細かな決まりを見落とします。一方で、行政書士の知識(法令の正論)だけを現場に押し付けても、実務が回らなくなります。

「現場の実務」と「最新の法令」の2つが交差して初めて、どこが本当に危ないのかが見えてきます。

「今使っている教育資料は、最新の改善基準告示に対応できているだろうか?」「自社流にアレンジしてきた点呼記録簿や運転者台帳に、法令上の抜けはないだろうか?」

少しでも不安を感じられたら、それは会社とドライバーの安全をさらに強くするための大切なサインです。これまでの慣習や実績に頼り切るのではなく、根拠のある記録に基づいた管理体制へ、見直しを始めましょう。

今の状況を確認する

今の状況に近いものを選んでください。質問に答えるだけで、確認しておきたい点を整理できます(無料・約3分)。

※2026年10月時点の法令に基づいて記載しています。

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この記事を書いた人

あさば行政書士事務所(神奈川県横須賀市)代表、行政書士の浅葉竜一です。
自動車部品の物流・倉庫会社で20年以上勤務し、運行管理者・出荷管理者として運送の現場に携わってきました。
その経験を活かし、一般貨物自動車運送事業の許可申請、増車・車庫などの変更手続き、巡回指導対策、黒ナンバー・貨物利用運送など、運送業の手続きを中心にサポートしています。
自動車登録・車庫証明、相続・遺言のご相談も承ります。

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