- 健康診断の管理不備が、運送会社では一般の会社より重い結果につながる理由
- 未受診者が3名以上になると「15日車×人数」で増え続ける、行政処分の基準
- 処分基準での「未受診」の考え方と、違反点数の仕組み
- 期限超過を防ぐための、無理のない期日管理の仕組み
運送事業の輸送の安全を確保するうえで、運転者の健康管理は重要な柱の一つです。
ところが実務では、定期健康診断について「数日の遅れであれば大きな問題にはならないのではないか」と受け止められていることも少なくありません。しかし運送会社では、この「わずかな期日超過」が、運輸局の行政処分によってトラックを動かせなくなることにつながる場合があります。
今回は、健康診断の期日管理について押さえておきたい基準と、実務で取り組みたい仕組みづくりを整理します。
一般の会社と運送会社で、何が違うのか
健康診断を受けさせる義務そのものは、一般の会社も運送会社も同じく、労働安全衛生法に基づくものです。違うのは、運送会社にはそれに加えて、貨物自動車運送事業法に基づく輸送の安全の規制と、運輸局による監査・行政処分があることです。
| 一般の会社 | トラック運送会社 | |
|---|---|---|
| 労働安全衛生法の健康診断 | 適用される | 適用される |
| 運転者の健康状態の把握 | 一般的な安全衛生管理 | 輸送安全規則による義務が加わる |
| 運輸局の監査 | 通常は対象外 | 対象 |
| 未受診による車両の使用停止 | なし | あり得る |
| 事業の許可への影響 | なし | 違反点数の累積によってはあり得る |
つまり運送会社にとって、健康診断の管理は「社員の健康管理」であると同時に、トラックを動かし続けるための条件でもあるということです。
健康診断の周期と、運送事業者の義務
労働安全衛生法に基づく、主な健康診断の周期は次のとおりです。
| 健康診断の種類 | 受診の時期・周期 |
|---|---|
| 雇入時の健康診断 | 雇い入れるとき |
| 定期健康診断 | 1年以内ごとに1回 |
| 深夜業を含む業務に常時従事する者の健康診断 | 6か月以内ごとに1回 |
さらに運送事業者には、貨物自動車運送事業輸送安全規則(第3条第6項)により、運転者の健康状態を把握し、病気や疲労などで安全な運転ができないおそれがある運転者を乗務させないことが求められています。健康診断は、その健康状態の把握の土台になるものです。
未受診の場合の、行政処分の基準
健康診断を受診させていない運転者を乗務させていた場合の行政処分は、未受診者の人数に応じて、次のように定められています。
| 未受診者の人数 | 初違反の処分 |
|---|---|
| 1名 | 警告 |
| 2名 | 20日車(自動車の使用停止) |
| 3名以上 | 15日車 × 未受診者の人数(自動車の使用停止) |
※関東運輸局「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について(別表)」(令和7年3月11日一部改正、令和7年4月1日施行)によります。3名以上の再違反は、30日車×未受診者の人数です。
ここで注意したいのは、3名以上になると、処分が一定の日数で頭打ちにならない点です。
受診の予定が全体的に後ろへずれ込むような管理をしていると、期限を過ぎた運転者が同時に何人も出て、処分の日車数が一気に大きくなります。ほかの違反が同時に見つかれば、それぞれの日車数は原則として合算されます。
「数日の遅れ」は、なぜ問題になるのか
処分基準でいう「未受診」とは、過去1年以内に法定の健康診断を受診させていない状態で、運行の業務に従事させることをいいます。
つまり、前回の受診から1年を過ぎた運転者を乗務させれば、たとえ数日の遅れであっても、処分基準上の未受診に当たり得ます。後から受診を済ませても、期限を過ぎて乗務させていた事実は残ります。
深夜の時間帯の業務に常時従事する運転者は、労働安全衛生法により6か月以内ごとの受診が必要です。6か月を過ぎれば労働安全衛生法上の問題になり得ますが、それだけで直ちに、運輸局の処分基準でいう「過去1年以内の未受診」に当たるとまでは言えません。どちらの期限も守れるよう、深夜業のある運転者は6か月周期で管理してください。
違反点数が、会社全体に響く
使用停止の処分を受けると、処分の日車数10日車までごとに1点の違反点数が付されます。点数は事業者ごとに、運輸局の管轄区域の単位で累積し、累積期間は原則3年間です(一定の条件を満たす場合は2年間)。
累積した点数が51点以上になると事業停止、81点以上になると許可取消しの対象になります(このほかの発動条件もあります)。たとえば未受診者10名で、ほかの違反がなく、この違反だけで処分が150日車となった場合、それだけで15点です。健康診断の期日管理の甘さが、会社全体の点数に直接響くということです。
運行管理者に対する資格者証の返納命令には、別に発令の基準があります。健康診断の未受診が見つかっただけで自動的に返納になるわけではありませんが、運行管理者としての義務を果たしていたかどうかは問われることになります。
期日管理を「仕組み」にする
健康診断の期日管理を、担当者の記憶やその場のスケジュール調整に頼っている状態は、繁忙期の「うっかり超過」を生む一番の原因です。日々の業務の流れの中に、無理のない確認の仕組みを組み込むことをおすすめします。
あわせて、「今月、期限が近い運転者が何人いるか」を毎月の点呼や会議で確認するようにすると、担当者一人に負担が集中しにくくなります。期限が近い運転者が3名を超えそうなときは、それだけで処分の基準が人数に応じて増える領域に入ることを、社内で共有しておくとよいでしょう。
健康診断の期日管理は、地味な作業です。しかし、客観的な記録に基づいて管理できていれば、運転者の健康を守ることにも、会社と運行管理者自身を守ることにもつながります。
物流の現場で20年以上、運行管理・出荷管理に携わってきた行政書士が担当します。巡回指導に向けた、健康診断の受診状況の確認や点呼記録・運行記録などの点検からご相談いただけます。
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