「4トン車なら大丈夫」という思い込みが、2024年告示で崩れる時。

このコラムで分かること
  • 改善基準告示が、4トン車や地場配送にも同じように適用される理由
  • 毎日13時間以内でも、1か月の上限を超えることがある仕組み
  • 2025年4月から全車両が対象になった、荷待ちの記録
  • 運送契約の書面に、運送以外の作業の対価を記載するルール

「うちは大型トラックを持たず、4トンの中型車や地場配送がメインだから、改善基準告示の厳しい時間管理はあまり関係ない」

もし社内に、このような空気が少しでも流れているとしたら、それはコンプライアンス上の「死角」になっているかもしれません。

「今までこのやり方で大丈夫だったから」という過去の実績は、次の巡回指導や監査の保証にはなりません。今回は、4トン車や地場配送が中心の事業所ほど押さえておきたい、時間管理と契約書面の盲点を整理します。

目次

改善基準告示は、車の大きさで区別していない

改善基準告示は、トラックなどの運転業務に主として従事する労働者について、拘束時間や休息期間などの基準を定めたものです。大型か4トン車か、長距離か地場配送かによって、対象が分かれるわけではありません。

また、改善基準告示は2024年に新しくできたものではありません。4トン車のドライバーにも、以前から適用されてきました。2024年4月から適用されているのは、2022年12月に改正された新しい基準です。

宿泊を伴う長距離運送には一部の例外がありますが、これは条件を満たした場合に限って基準を延長できる例外です。「近場だから基準が緩い」という扱いはありません。

社長自身が運転する場合

労働基準法上の労働者に当たらない個人事業主などは、改善基準告示の直接の対象ではありません。ただし、貨物自動車運送事業法などに基づく運行管理上の規定は、個人事業主などである運転者にも適用され、実質的に改善基準告示の遵守が求められるとされています。「社長だから時間管理の対象外」とは言えません。

地場配送で、拘束時間が延びやすい理由

「長距離を走らないから、運転時間はそこまで長くならない。だからうちはセーフだ」と考えがちです。しかし、改善基準告示で管理するのは運転時間だけではありません。

拘束時間 = 労働時間 + 休憩時間
▼
労働時間には、運転・積込み・荷卸し・荷待ち・点呼・点検などが含まれる

荷待ちなどの手待ち時間も労働時間であり、拘束時間に含まれます

地場配送や定期便の現場で長くなりやすいのが、納品先での荷待ちの時間や、積込み・荷卸しの時間です。近場を数往復しているだけでも、待ち時間や荷役が重なれば、拘束時間は運転時間よりずっと長くなります。

2024年4月から適用されている基準は、次のとおりです。

原則労使協定で延長する場合
1日13時間以内(延長する場合も最大15時間。14時間を超えるのは週2回までが目安)―
1か月284時間以内310時間以内(年6か月まで)
1年3,300時間以内3,400時間以内

※労使協定で延長する場合も、284時間を超える月が3か月を超えて連続しないこと、年間3,400時間以内に収めることなどが必要です。

毎日13時間以内でも、1か月の上限を超えることがある

地場配送で見落とされやすいのが、1か月の上限です。1日ごとに見れば基準内でも、毎日の勤務が積み重なると、1か月の拘束時間が上限を超えることがあります。

1日の拘束時間
13時間
毎日、原則の13時間以内に収まっている
1日の基準は満たす
これを月22日続けると
286時間
13時間 × 22日 = 286時間
1か月の原則(284時間)を超える

※考え方を説明するための例です。労使協定による延長の有無や、各月・年間の拘束時間などで、判断は変わります。

1日単位の確認だけでは足りず、1か月・1年の合計まで追いかける必要があるということです。待ち時間が毎日少しずつ延びている現場ほど、月末に気づいたときには上限を超えている、ということが起こり得ます。

2025年4月から、荷待ちの記録は全車両が対象に

荷待ちの記録についても、車の大きさで考えるのは危険です。

2025年4月からは、荷待時間や荷役作業等について、業務記録義務の対象が全車両に拡大されました。それまでの対象は、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両に限られていましたが、現在は車両の大きさにかかわらず記録が必要です。荷主都合で30分以上の荷待ちが発生した場合など、所定の条件に該当するときに記録します。

「4トン車は以前は対象外だった」とは限りません

旧基準は「車両総重量8トン以上」または「最大積載量5トン以上」のどちらかに当てはまれば対象でした。最大積載量4トンの車両でも、車両総重量が8トン以上であれば、以前から記録の対象だったことになります。自社の車両がどうだったかは、車検証で確認してください。

この記録は、義務を果たすためだけのものではありません。どの納品先で、どれだけ待たされているのかが記録に残っていれば、荷主と改善を話し合うときの材料になります。

契約書面で「待たされた分」を形に残す

もう一つ押さえておきたいのが、2025年4月から施行されている改正貨物自動車運送事業法の書面交付です。運送契約を結ぶときには、書面の交付が義務になりました。

この書面では、運送の対価と、積込み・取卸しなどの運送以外の作業の対価を、原則として分けて記載する必要があります。「昔からの付き合いだから」と運賃に含めて済ませてきた作業も、契約の段階で形に残すことが求められています。

時間制運賃の場合の取扱い

時間制運賃の場合は、その時間内に行う積込み・取卸しの対価を運賃に含めることも認められています。ただし、積込み・取卸しを行うこと自体は、交付する書面に明記する必要があります。

荷待ちの記録と契約書面がそろっていれば、「走った分、作業した分の対価を受け取れているか」を、客観的に確かめられるようになります。

現場に無理のない「仕組み化」から始める

小規模な事業所ほど、日々の配車やトラブル対応に追われ、制度の変化を日々の帳票に反映させることが後回しになりがちです。しかし、改善基準告示に違反する状態が続けば、行政処分の対象となることもあります。処分の内容は、違反の内容や件数などによって異なります。

まずは、次の3点から確認してみてください。

① 始業から終業まで
運行日報や点呼の記録で、始業・終業の時刻を正しく残せているか
② 待ち時間と荷役
納品先での荷待ちや積込み・荷卸しの時間を、区分して記録できているか
③ 荷主との書面
運送の対価と、それ以外の作業の対価が分かる書面を交付できているか

日々の記録を確実に残していく仕組みづくりが、ドライバーと会社の両方を守る基盤になります。

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この記事を書いた人

あさば行政書士事務所(神奈川県横須賀市)代表、行政書士の浅葉竜一です。
自動車部品の物流・倉庫会社で20年以上勤務し、運行管理者・出荷管理者として運送の現場に携わってきました。
その経験を活かし、一般貨物自動車運送事業の許可申請、増車・車庫などの変更手続き、巡回指導対策、黒ナンバー・貨物利用運送など、運送業の手続きを中心にサポートしています。
自動車登録・車庫証明、相続・遺言のご相談も承ります。

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