- アルコールチェックと押印だけの「点呼もどき」で、足りないもの
- 業務前・業務後の点呼で、法令が確認を求めている事項
- 睡眠不足などの確認を、形だけにしない工夫
- 指導監督の記録事項と、記録がない場合の処分の基準
運送業の現場で、毎日必ず行われている「点呼」。しかし、日々の配車業務に追われるうちに、いつの間にかこんな運用になっていないでしょうか。
「出勤して、アルコールチェックをして、お互いにハンコを押して終わり」
記録をつけることだけが目的になった、形だけの点呼。ここでは「点呼もどき」と呼びます。毎日やっているから大丈夫、と思いがちですが、点呼で本来確認すべきことを確認できていなければ、書類がそろっていても安心とは言えません。
点呼で確認すべきことは、アルコールだけではない
貨物自動車運送事業輸送安全規則では、点呼で確認する事項が定められています。
点呼は、運転者から報告を求め、確認し、必要な指示を与えるものです。そして、点呼で行った報告・確認・指示の内容などを記録し、1年間保存することが求められています。
アルコールチェックとハンコだけで終わっている点呼では、「睡眠不足などで安全な運転ができないおそれがないか」の確認が抜け落ちている可能性があります。
① 「良好」の一言で終わらせない
点呼簿の健康状態の欄が、毎日「良好」とだけ記入されている。こうした運用では、何をどう確認したのかが、記録からは見えにくくなります。
「体調はどう?」「大丈夫です」というやり取りだけに頼るのではなく、たとえば前夜の睡眠時間を具体的に聞いて記録する、顔色や受け答え、疲労の様子もあわせて確認する、といった工夫が考えられます。睡眠時間を数字で記録すること自体は法令上の義務ではありませんが、法令が確認を求めている「睡眠不足」を確かめやすくする方法の一つです。数字だけで判断するのではなく、総合的に確認することが大切です。
睡眠時間が短い日が続いている運転者がいれば、記録から早めに気づけます。「最近、眠れていないようだね」と声をかけるきっかけになり、事故を防ぐための指示にもつながります。
② 指導を「一人ひとり」の記録に残す
運送事業者には、運転者に対して、事故防止や法令に関する指導・監督を行い、その内容を記録して、営業所で3年間保存することが求められています。
※日時・場所・内容・指導した人・受けた人は、法令で定められた記録事項です。
月に一度の全体講習だけで終わらせるのではなく、日々の点呼や面談の機会に行った個別の声かけや指導も、運転者ごとの記録に残していくと、継続的な安全管理に役立ちます。ただし、それだけで、指導監督の指針に定められた年間の教育項目を実施したことになるわけではありません。法定の指導監督は、指針に定める内容を毎年、計画的に実施する必要があります。
記録がないと、どうなるか
点呼や指導監督の記録が残っていない場合は、行政処分の対象になります。関東運輸局の基準では、初違反の場合、次のように定められています。
| 違反の内容 | 初違反 |
|---|---|
| 点呼の記録が一部ない/記載事項に不備がある | 警告 |
| 点呼の記録がすべてない | 30日車 |
| 指導監督の記録が一部ない/記載事項に不備がある | 警告 |
| 指導監督の記録がすべてない | 40日車 |
※関東運輸局「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について(別表)」によります。再違反の場合は、より重い基準が定められています。
なお、これは「記録」に関する基準です。点呼を実際に行っていない、必要な確認が抜けているといった場合は、点呼の実施についての別の基準で判断されます。記録がそろっていることと、点呼が適切に行われていることは、別の問題だということです。
現場のリーダーの不安を、仕組みで解消する
「自社の今の点呼のやり方で、本当に大丈夫だろうか」「知らないうちに形だけになっていないだろうか」
日々の運行管理を担う運行管理者や現場のリーダーは、こうした不安を抱えながら業務にあたっていることも多いと思います。だからこそ、個人の熱意や記憶に頼るのではなく、日々の業務の流れの中に、無理なく確実に記録が残る仕組みを取り入れることが大切です。
点呼簿の書式に睡眠時間の欄を設ける、指導記録の用紙を運転者ごとに用意する。小さな見直しから始めるだけでも、点呼は「もどき」から「実効性のある点呼」に変わっていきます。
物流の現場で20年以上、運行管理・出荷管理に携わってきた行政書士が担当します。巡回指導に向けた、点呼簿や指導記録の書式・記載内容の点検からご相談いただけます。
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