- 実運送体制管理簿は、誰が、どんなときに作るのか
- 「1.5トン」を、車の大きさではなく依頼ごとの貨物の重さで判断する方法
- 下請けの立場でも関わる、情報の通知義務
- 書面交付には1.5トンの条件がないことと、書面に記載する内容
2025年4月に施行された改正貨物自動車運送事業法によって、トラック運送の取引に2つの「見える化」が始まりました。
一つは、実際に誰が運んでいるのかを記録する「実運送体制管理簿」。もう一つは、どのような条件で運送を引き受けたのかを書面に残す「運送契約の書面交付」です。
このうち「1.5トン」という数字は、管理簿の作成が必要になる条件です。ところが、この数字だけが印象に残り、「うちは小口配送だから関係ない」と書面交付まで見落としてしまうケースがあり得ます。2つの違いを整理します。
実運送体制管理簿:「1.5トン」の境界線
実運送体制管理簿を作成するのは、真荷主から1.5トン以上の貨物の運送を引き受け、その全部または一部を他の事業者に運送させる元請の事業者です。引き受けた運送をすべて自社で行う場合は、管理簿の作成は必要ありません。
1.5トンかどうかは、真荷主から運送の依頼があった時点で、その依頼ごとに、引き受けた貨物の重さで判断します。トラックの最大積載量で判断するわけではありません。
| ケース | 管理簿の扱い |
|---|---|
| 1回の依頼で2トン(配達先は複数) | 1.5トンの条件を満たす |
| 別々の依頼で1トンずつ、合計2トン | 原則として1.5トンの条件を満たさない |
| 1回の依頼で2トン、一部を他社に委託 | 作成が必要 |
| 1回の依頼で2トン、全部を自社で運送 | 作成は不要 |
※災害などの例外があります。また、元請から実運送事業者までの委託関係があらかじめ明らかな場合は、運送のたびに管理簿を作成しなくてもよいとする特例があります。
管理簿には、次の事項を記載し、原則として運送が完了した日から1年間保存します。
多重下請けの構造の中で、実際に運んでいるのは誰なのかを、元請の事業者が把握できるようにするための仕組みです。
実運送体制管理簿を作成するのは元請の事業者ですが、下請けの事業者にも、情報を通知する義務があります。
管理簿の作成対象となる運送で、所定の通知を受けて実際に運送した場合は、自社の名称、運送した貨物の内容・区間、請負階層を元請の事業者に通知します。また、さらに別の事業者へ運送を委託する場合は、元請の連絡先や真荷主の名称、次の委託先の請負階層などを、その委託先に伝えます。
なお、通知を受けておらず必要な事項が分からない場合などには、例外があります。
2026年4月1日からは、元請として運送を引き受ける場合など一定の条件のもとで、貨物利用運送事業者にも、実運送体制管理簿の作成や真荷主との書面交付などの義務が課されています。
書面交付には、1.5トンの重量条件がない
管理簿の作成とは別に、忘れてはならないのが運送契約の書面交付です。こちらには、管理簿のような「1.5トン以上」という重量の条件はありません。法律で定められた書面交付義務が適用される取引では、小口の配送であっても書面交付が必要です。
| 実運送体制管理簿 | 運送契約の書面交付 | |
|---|---|---|
| 見える化するもの | 実際に誰が運んでいるか | どのような条件で契約しているか |
| 主な対象 | 真荷主から引き受けた元請の事業者が、他の事業者に運送を委託する場合 | 真荷主と元請の事業者の間で相互に交付。運送を委託する場合は、委託元から委託先へ交付 |
| 重量の条件 | 依頼ごとに1.5トン以上 | 1.5トンのような重量の条件はない |
※一般消費者との運送契約、災害その他緊急やむを得ない場合などには例外があります。通常のスポット輸送は、例外に当たりません。
書面には、主に次のような事項を記載します。
運送の対価と、積込み・取卸しなどの運送以外の作業の対価は、原則として分けて記載する必要があります。
時間制運賃の場合は、その時間内に行う積込み・取卸しの対価を運賃に含めることも認められています。ただし、積込み・取卸しを行うこと自体は、交付する書面に明記する必要があります。
なお、所定の事項が記載されていれば、送り状などの既存の書類を活用することもできます。毎回「契約書」という名前の書類を新しく作らなければならない、というわけではありません。電子メールなどで交付する場合は、相手方の承諾など所定の条件があります。
また、法律で定められた記載事項とは別に、荷待ちが発生したときの扱いなども、あらかじめ取り決めて書面に残しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
書面が整っていないと、何が起きるか
書面交付義務の違反そのものに罰則はありませんが、運送事業者にとっては法律上の義務であり、対応が不十分な場合は、行政処分の対象となることもあります。
それ以上に大きいのは、取引上のリスクです。書面がなければ、「どこまでが運賃に含まれていたのか」「積込みや荷卸しの作業は約束していたのか」といった取引条件を後から確認しづらくなり、認識の食い違いが生じるおそれがあります。待たされた分、作業した分の対価を求めようとしても、話し合いの根拠が弱くなってしまいます。
長年の口約束や、あいまいなままの契約を放置することは、荷主と運送事業者の双方にとってリスクになり得ます。
実務に即した契約書の整備で、会社を守る
書面を作ることそのものよりも大切なのは、その書面が現場の実態に合っていることです。積込み・荷卸しの範囲、荷待ちの扱い、附帯作業の内容。書面に書かれた条件と、実際に現場で行われている作業がずれていれば、書面を交付していても意味が薄れてしまいます。
物流の現場で20年以上、運行管理・出荷管理に携わってきた経験を活かし、見落とされがちな附帯作業まで含めた、実態に即した契約書の整備をお手伝いします。「今の契約内容で大丈夫だろうか」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。

