この記事の要点
一般的な安全教育も個別対策も行っていたドライバーに、客先構内で速度超過の指摘がありました。「教えたこと」と「実際の運転行動」は別物です。事故やルール逸脱のリスクをゼロと決めつけず、記録を使って傾向を確かめ、必要なところに対策を続ける運行管理について考えます。
ある日の客先での出来事
先日、客先の構内で、あるドライバーに速度超過の指摘があった。大きな事故につながったわけではないが、放っておいていい話でもない。数字だけ見れば「よくある話」かもしれない。
この記事で扱うのは、客先構内で指摘された速度超過についての安全管理上の事例だ。警察による道路交通法上の速度違反の取締りだったと断定するものではない。
正直に言うと、この出来事を最初にコラムにしようと考えたとき、私は「教育が足りなかったのでは」という方向で書こうとしていた。しかし、事情を整理していくと、そんなに単純な話ではなかった。
すでに、やるべきことはやっていた
このドライバーについては、以前から速度が出がちな傾向があることを会社としても把握していた。だから何もしていなかったわけではない。
- 交通ルールの遵守、プロドライバーとしての自覚についての教育
- 事故が起きた場合の重大性についての教育
- 客先からの信用を失えば、仕事そのものを失う可能性があるという説明
- 一人の行動が周囲の従業員にも影響するという話
- 本人に対する資料での個別の注意喚起
- 「見られている」という意識づけ
- 速度超過時のアラート
一般的な安全教育に加えて、個別の対策まで行っていた。実際、デジタコの記録を確認すると、普段の走行速度は35km/h程度に収まっていた。以前より速度超過は抑えられていた、と言っていいと思う。
それでも、起きた。
「対策が効いていなかった」とも言い切れない
ここで一つ、書き方に気をつけたいことがある。「普段は35km/hに収まっていた」という事実から、「対策が効いていた証拠だ」と断定することはできない。本人が意識していたのかもしれないし、他の要因かもしれない。
データから言えるのは、記録上の速度超過が以前より抑えられていたというところまでで、その理由は分からない。
分かっているのは、教育も個別対策も行っていたにもかかわらず、今回、客先構内で速度超過が指摘されたということだ。
事情聴取は、体制上、その案件を担当する運行管理者が行った。私自身は直接この件に関わっていない。把握している範囲では、事実確認と注意が行われたが、本人がなぜその速度で走ったのか、考え方の奥まで確認できていたかは分からない。
点呼で「今日も安全運転します」と言われても、その言葉が具体的な行動にどう結びつくのかは、言葉だけでは見えてこない。行動や記録を通じて、初めて気づくこともある。
「教育が足りない」ではなく、「理解と行動は別物」
今回の件を通して考えさせられたのは、「何を教育すればいいのか」だけでなく、「教育した内容が実際の運転行動にどこまで反映されているかを、どう確認するのか」という問いだった。
デジタコの速度データは、指摘や注意の根拠として使うこともできる。しかし、普段の運転データを継続して見ていれば、本人も気づいていない傾向や、対策の後に行動がどう変わったかを確かめる材料にもなる。
犯人探しの道具ではなく、「今どこにリスクが残っているか」を見るための道具として使う。今回のケースも、そういう目で見返す材料になった。
100%防ぐ方法は、たぶんない
ここまで整理して、運行管理者として一つの問いに突き当たる。
「では、何をすれば100%防げるのか」
答えは、たぶん、ない。どれだけ教育し、個別対策をし、データを確認しても、リスクを完全にゼロにできるとは限らない。今回の出来事は、対策後も注意を続ける必要があることを考えさせる。
だからといって、対策に意味がないわけではない。以前より速度超過が抑えられていたという記録もある。原因や効果を決めつけず、続けて確認することに意味がある。
運行管理者の仕事は、事故やルール逸脱をゼロにする魔法を探すことではなく、
- 傾向を把握する
- 教育する
- 個別に対策する
- データで確認する
- 改善しなければ、さらに対応する
- それでも残るリスクを前提に、管理を続ける
という、リスクを小さくし続ける仕事なのだと思う。一度やって終わりではなく、繰り返す。それでも起きることはある。それでも、続ける。
全員を縛るのではなく、必要なところに
最後にもう一つ、今回の対応で書いておきたいことがある。この件を受けて、会社として新しい対策は追加していない。
これは「何もしなかった」という意味ではない。すでに全体への安全教育があり、速度の傾向が見られるドライバーには個別の対策も行ってきた。今回の事案を踏まえ、既存の取組を続けながら、記録で行動を確認していくという判断だった。
一人のヒヤリが起きるたびに、関係のない他のドライバーにも一律の作業や制約を増やせば、現場の負担は大きくなる。もちろん、同じ危険が他の運転者にもあると分かれば、全体への対策が必要だ。個別の問題か、組織全体の問題かを見極めることが欠かせない。
必要なところに、必要な対策を。全体には、続けるべき取組を続ける。
100%防げないからといって、対策をやめる理由にはならない。リスクを下げ続けるために、これからも見て、聞いて、確かめていく。今回の出来事から、改めてそう思った。
この記事の扱いについて
本記事は客先構内での安全管理に関する経験談です。道路交通法上の速度違反の成立や、警察の取締りの有無を判断する記事ではありません。速度については、構内で適用されるルールと実際の状況を確認する必要があります。

