②「増車だから届出でいい」は危険?トラックの増車で認可が必要になるケース

トラックディーラー向け実務コラム|全3回+番外編
  1. トラックの登録手続きはどう変わった?
  2. トラック増車は届出か認可か?(本記事)
  3. 増車で見落としやすい車庫の落とし穴
  4. 番外編:納車日から逆算する、手続きの順番
このコラムで分かること
  • 増車が「届出」で済むか「認可」が必要になるか、3つの分岐点
  • 「30%・11両」の基準を、具体的な台数で確かめる方法
  • 認可が必要になると、納車スケジュールにどう影響するか

新しいトラックを購入することになった。今回は増車だから、事業計画変更の届出を出せばいい。

そう考えて手続きの準備を進めていたところ、実は「届出」ではなく「認可」が必要なケースだった――。

こうなると、単なる書類の出し直しでは済みません。届出は実施予定日より前に届出書を提出して進める手続きですが、認可は運輸支局の審査を経る必要があり、時間がかかります。「増車だから届出で大丈夫」という思い込みは、納車スケジュールに直結する落とし穴になり得ます。

前回は、行政書士法改正によって登録や車庫証明の書類の担い手が変わったことをお伝えしました。では、運送会社側で増車の手続きを進めるとして、次に確認すべきなのは「その増車は本当に届出で足りるのか」という点です。

関東運輸局・神奈川運輸支局が公示している「事業計画変更等に関する処理方針」(令和7年8月1日改正)をもとに、届出から認可に切り替わる分岐点を整理します。

目次

分岐点①:増車の規模(30%・11両)

もっとも知られているのが、増車の規模による基準です。計算のしかたは次のとおりです。

今回増車する車両数 + 申請日前3か月以内に増加した車両数
▼
申請日から起算して3か月前時点の、その営業所の配置車両数の
30%以上になる
認可が必要

ただし、増車の合計が10両以下であれば対象外です

数字で見るとイメージしやすくなります。

3か月前に36両の営業所
36両 → 47両
11両増 ÷ 36両 ≒ 30.6%
認可
3か月前に37両の営業所
37両 → 48両
11両増 ÷ 37両 ≒ 29.7%
届出

※どちらも、直近3か月以内にほかの増車がない場合の例です。

わずか1両の差で、届出と認可が分かれます。しかも基準になるのは申請日ではなく「3か月前時点」の車両数で、直近3か月以内に増やした車両も合算します。「今回の増車だけ見れば大丈夫」と思っていても、直近数か月の動きまで含めると基準を超えている、というケースがあり得ます。

分岐点②:「5両」の基準(最低車両数)

一般貨物自動車運送事業の営業所には、最低車両数(5両)の基準があります(霊きゅう運送・一般廃棄物運送・一部の島しょ地域などの例外を除く)。処理方針では、この基準を満たさなくなる変更について、増車と減車で次のように扱いを分けています。

減車で5両を下回る場合
届出では進められません。災害などで車両が使えなくなり、代わりの車両を確保するまでの間に限って認められる扱いです。
5両に満たない営業所で増車する場合
基準に適合させるための適切な計画があると認められる場合に限って、認められる扱いです。
営業所の間で車両を融通するとき

自社の営業所の間で車両を融通する場合は、短期間であっても、原則としてそれぞれの営業所で増車・減車の手続きが必要です。ただし、国の「営業所間における運転者及び車両の移動の弾力化」の通達に沿った一時的な移動や、協定書などを結んで事業用自動車を相互に使用する場合には、例外があります。

分岐点③:営業所の法令遵守の状況

ここが今回、特にお伝えしたい点です。増車が認可扱いになるのは、台数の規模だけが理由ではありません。次のような場合などは、法令遵守が十分でないとして、認可と同じ基準で審査されます。代表的なものが次の3つです。

許可取消しとの関係
密接な関係を持つ者が、事業許可の取消しを受けてから5年を経過していない
累積違反点数
変更する営業所の、行政処分の累積違反点数が12点以上
巡回指導の評価
変更する営業所が、申請日前1年間に、巡回指導の総合評価で「E」を受けている

つまり、「今回は5両だから大丈夫」と台数だけで判断していても、営業所の法令遵守の状況によっては認可扱いになることがあります。増車の計画を立てる際は、車両の手配だけでなく、営業所の巡回指導の評価や累積違反点数もあわせて確認しておく必要があります。

処分を受けている場合

車両の使用停止以上の処分を受けている場合は、増車の実施予定日までに、その処分期間が終わっている必要があります。

届出と認可で、何が違うのか

事前届出認可
手続き実施予定日より前に届出書を提出する(繁忙期は当日の確認が難しい場合があるため、できるだけ早めに)申請して、運輸支局の審査を受ける
期間の目安―標準処理期間:運輸支局長権限に係るもので1〜3か月、その他のもので1〜4か月。書類の補正などにかかる期間は含まれないため、必ずこの期間内に認可されるとは限りません

トラックを注文し、増車のつもりで届出の準備を進めていたところ、実は認可が必要だと判明する。そこから改めて認可申請の準備をして審査を待つとなれば、当初想定していた納車時期に間に合わなくなることは十分にあり得ます。

「増車だから届出でいい」という判断は、車両を発注した後、できるだけ早い段階で確認しておくべき事項です。トラックが完成してから確認するのでは、選べる対応の幅がかなり狭くなってしまいます。

届出で済んでも、もう一つ確認すること

ここまでの分岐点をクリアして、届出で手続きを進められるとします。しかし、それで増車の準備が整ったとは限りません。

処理方針では、増車の届出に伴って車庫の収容能力の拡大などの変更が必要になる場合、その変更手続きを先に終えていることが条件とされています。あわせて、運転者・運行管理者・整備管理者が確保されていることも必要です。

次回は、増車を検討する際に見落とされやすい「車庫」の問題について整理します。

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物流の現場で20年以上、運行管理・出荷管理に携わってきた行政書士が担当します。届出か認可かの判断から、車庫の変更、登録の書類までご相談いただけます。

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この記事を書いた人

あさば行政書士事務所(神奈川県横須賀市)代表、行政書士の浅葉竜一です。
自動車部品の物流・倉庫会社で20年以上勤務し、運行管理者・出荷管理者として運送の現場に携わってきました。
その経験を活かし、一般貨物自動車運送事業の許可申請、増車・車庫などの変更手続き、巡回指導対策、黒ナンバー・貨物利用運送など、運送業の手続きを中心にサポートしています。
自動車登録・車庫証明、相続・遺言のご相談も承ります。

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